マレーシア留学のハードルは超低い!
高橋 幸一さん
工学部 水環境土木工学科
留学期間:2023年9月~2024年7月
留学先:マラヤ大学
留学先大学について
マラヤ大学は、マレーシアにある国立大学で、1905年に設立された歴史ある大学です。QS世界大学ランキング2024年によれば、世界で132位とかなり高い評価が付けられていて、マレーシアではNo.1です。日本で言う東京大学のような立ち位置の大学で、在籍している学生も優秀な学生が多い印象で、あたりまえのようにバイリンガルやトリリンガルの学生がごろごろいました。
敷地が広大で890.77エーカー(東京ドーム77個分)という敷地面積を誇り、学内には10を超える学生寮、食堂、コンビニ、美術館、4階建ての中央図書館、複数のカフェ、カヤック用の池、サッカー場、広大な森林などがあり、大学の中でQOLの高い生活を成り立たせる事ができます笑。留学生も多数抱えており、毎学期300人以上の留学生が世界各国のあらゆるところからやってきます。日本人にも人気の大学で、私が行った前期と後期どちらの学期も、少なくとも40人の日本人留学生がいました。
なんといってもマラヤ大学最大の魅力は留学生に対する手厚いサポートです。グローバルバディという現地学生で構成された、留学生の生活をサポートするグループがあり、留学生向けの5つのサークルの運営、留学生歓迎イベント「UMWOW」の企画・運営、空港ピックアップサポート、留学生向けイベントの企画・実行、ビザ・履修登録のサポートなど、あらゆる業務に携わっていて、献身的かつフレンドリーに留学生を迎え入れてくれます!バディがいて、留学生向けのイベントをつくってくれたおかげで、たくさん友人ができましたし、多くの文化体験ができました。何よりバディが親友のように接してくれたため、バディには感謝してもしきれません。グローバルバディ制度があり、日本人も多いので、マラヤ大学の留学のハードルはかなり低いです!

グローバルバディとご飯に行った際の写真

夜のツインタワー前にて。
学習面について
マラヤ大学では、1つの授業は基本的に3時間で構成されており、2時間が講義の時間で、もう1時間が「Tutorial」と呼ばれる演習の時間であることが多いです。授業によっては、別日に講義と演習の時間をとる授業もあるので、取っている授業数が少なくても、学校に行く回数が多くなってしまうこともあります。ひとつの授業は2もしくは3単位で、信州大学では規定上3つ以上の授業を取らなければなりません。また、マラヤ大学の規定上、留学生は学期あたり20単位が上限なので、最大7つまで授業がとれます。ただし、周りの友人の反応や体感から授業数5つぐらいからだいぶ忙しくなります。単位取得の難易度はそこまで高くなく、授業に出席し、課題をしっかり提出し、学期末テストで大きなミスをしなければ問題なく受かります。評価形式として、グループ課題と期末テストを課す授業がほとんどで、グループ課題はプレゼンテーション形式がメジャーです。中には、フィールドワークやケーススタディを必須にする授業もあり、みんな熱量がバラバラなので、現地の学生や留学生とのタイムマネジメントやタスク管理が大変ですが、かなりやりがいや達成感があると思います。
最近は、生成AIが誕生し、多くの留学生や現地の学生が課題に取り組む際に活用していますが、私は否定派ではありません。いい意味でも悪い意味でも、AIにより留学のハードルが劇的に下がり、留学の目的の必要性がかなり高まったように思えます。私は留学の目的を、「専門分野にとらわれず幅広い知識や教養の涵養することや、異文化交流によるコミュニケーション能力や異文化理解力の向上を図ること」においていて、英語学習にあまり重点をおいていなかったので、留学期間中、日本語の学術誌や本をたくさん読んだり、現地の人と積極的に関わったり、文化体験をすることに時間を使っており、あまり関係ない英語の課題などでは生成AIの力を借りました。英語の学習を大きな目的としている場合は、英語の課題で生成AIをがつがつ利用するのは避けたほうがいいと思います。AI時代に留学をする人は、明確な目的設計と、目的に応じた適切なAIの使い分けが必要だと感じました。
生活について
マレーシアは民族的・宗教的に多様性豊かな国で、国民の約60%がマレー系、約25%が中華系、約8%がインド系、残りは先住民やタイ系、外国人であり、基本的にそれぞれの民族においてそれぞれ別の宗教が対応しています。多数派はマレー系のほとんどの人が信仰するイスラム教であり、その他にも仏教、ヒンドゥー教、キリスト教などが混在する、世界で見てもとてもめずらしい国です。そのため、それぞれの宗教的建造物が街に共存しており、宗教的なイベントや祝祭も体験できるため、宗教などに馴染みが少ない日本人にとって、非常に貴重な学習機会にあふれている国であるとも思っています。特に、旅は文化の解像度が高まるので、留学に来たら、その国はもちろんのこと、その国以外の国も、ぜひたくさん旅してみてください!
物価は体感的には日本の1~1/3ぐらいで、食事は安いですが、モノに関してはそこまで安くはないです。言語はマレー語が最も離されていますが、基本的にほとんどの人が英語が通じます。また、特に首都のクアラルンプールには日本人が多く住んでおり、日本食レストランがかなり多く、ドン・キホーテや無印良品、ユニクロ、ららぽーとなどの日系企業もたくさんあります。日本人が運営している美容室や病院、クリニックなどもあるので、1年間という長めの留学期間でしたが、生活に不便さを感じたことはなく、ホームシックになったこともなかったです。

クアラルンプール都市部の様子

観光地として人気なモスク「ピンクモスク」

マレーシアの世界遺産、東洋と西洋の文化が交錯する地「マラッカ」
留学で得たこと
私は、留学は全人類がすべきと断言できるほど有意義なものだと考えています。私の人生は留学を経て明確に変わりました。ずばり、留学をする最大のメリットは、全く違う環境で、全く違う人々とであうことにあり、これによりこれまでとは全く違った世界の見方や自分自身に対する見方を会得することができ、世界や自分の両者に対して理解が深まります。
人間の心理上、自分自身のアイデンティティを定義づけたり、自分の判断や行動を規定したりする要因は、自分のいる環境と関わっている人に深く依存すると考えており、一度自分の価値観にあわせて無意識的にそれらが構築されてしまえば、なかなかそこから逸脱することができず、狭い視点で物事を考えることになり、狭い視点でしか自分自身を理解することができません。そのため、その無意識的に構築された居心地の良い環境からあえて脱して、たくさんの人の生き方や文化・生活のあり方について触れることで、自分の考えや生活に向き合い、考えるきっかけにつながり、理解が深まります。とりわけ自分への理解が深まることは、自分のアイデンティティを認識し、自身の志向性を理解することを意味し、いままでとは違う自分自身を知覚できたり、純粋に留学という厳しい環境で成長することを通じて新たな自分を発見できるため、今後の自身が下す判断などに迷いが出づらくなったり、自分自身の軸やビジョンが形成されるようになったり、自分の未来に対して新たな選択肢が増えたりするようになります。これは人生においてかなりプラスの経験であり、留学という、あえて自分が生まれ育ち慣れ親しんだ環境から離れたことにより得られたものです。
後輩へのアドバイス
半年でも一年でも、強く留学をすることを勧めます!信州大学では「計画的特例履修制度」と呼ばれる1年留学すると、卒業は1年伸びるものの、授業料は実質4年分となる制度があり、留学でかかる費用は、実質生活費のみとなります。海外留学奨学金も充実しており、物価の安い国では、奨学金でもらえる額のほうが多くなることもあるので、金銭面に関してはそこまで心配ないかと思います!
留学中に心がけておいたほうがいいことは3つあります。1つ目は目的を明確化することです。留学前後でも留学に対するイメージや実際得られることが変わると思うので、定期的に目的を見直し、それにあわせた行動を心がけたほうが良いかと思います。とりわけマラヤ大学では留学生が多く、毎週遊びに出かけている人も多いので、影響を受けがちになりますが、目的に合わせて柔軟に対応する必要があります。2つ目は記録に残すことです。海外という今まで生活していた環境とは全く違う場所に飛び出すことで、気づくことが多いと思います。気づきやアイデアは記録に残さない限りすぐに忘れてしまいますので、思いついた時点でメモに残したり、毎日日記につけたりすることで、留学で得た気づきや学びを最大化できると思います。3つ目は、宗教や政治の話をすることです。よく留学先では宗教と政治の話はタブーですよと念を押されますが、そもそも留学生側から話を振られることが多く、日本にいるとそこまで話題にあがらないトピックなので、こういう話ができるのは貴重な経験かと思います。このような議題では自分の意見を押し通した場合、対立の種になりがちですが、相手の話を否定せずに情報を引き出すかたちで対話をすると、非常によい学習機会になるかと思います。
最後になりますが、留学はほんとうにプラスになることが多いので、みなさんぜひ留学に挑戦してみてください!
